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民間のサラリーマン「曽根シーソー」の短編小説集
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ギブ・アンド・ギブ
今日から君の給料は、社員みんなで分け合うことにする。

社長がそう言ったのが始まりだった。
ナカミヤが会社の交際費を私用に使い込んでいたことが発覚した時、
彼は当然クビになると思っていた。
クビだけならいいが、起訴されたら横領罪になる。
だが、社員20名のコンパクトな会社だったことと、社長の温情で、彼はその危機を免れた。
その代わりに下された審判だった。

「君の給料の使い道を考えるのは君以外の社員次第だ。
それぞれの小遣いにするもよし、営業経費に回すもよし、
君にはその使い道を指示する権限は全くない。
それでいいね?」

ナカミヤがその条件を飲んだのは、起訴されたくない一心だった。
とにかく今は我慢だ。
ほとぼりがさめる頃合いを見計らって、しれっと辞めてしまえばいい。
ナカミヤは自分にそう言い聞かせて、給料ゼロの日々を送ることを決意した。

社長の通達があってから、しばらくナカミヤ以外の社員は困惑していた。
一度受け取っておいてから後でこっそりナカミヤに返そう、という意見も多かった。
だがワンマンで厳しい社長のことを考えると、そういうわけにもいかない。
とりあえず最低限の生活費だけはナカミヤに渡した上で、残った金で株を買うことになった。
月のはじめに皆で話し合って銘柄を決めて買う。
そして購入時よりも月末の株価が上回っていれば即、すべてを売り抜ける。
下回っている場合は買い増した上で次月に繰り越す。
得た利益はナカミヤを含め、社員全員に分配する。
この簡単なルールで始めた遊びが、予想外の利益を生み出し、
半年後にはちょっとした資産となっていた。

そこである社員が、この金でビジネスをやってみよう、と言い始めた。
皆は仕事が終わると酒を飲みながら討議をし、子供用のおもちゃを通信販売で売ることにした。
ボタンを押すとカメのキャラクターが動きはじめ、クビや手足をひっこめながら
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と連呼するという、酒の席で生まれたおもちゃにふさわしい代物だった。
名前はもちろん「ナカミヤくん」。

これが売れた。

きっかけは人気ブロガーが自分のブログで大絶賛したことからで、さらにこの記事がワイドショーで取り上げられ、子供用のつもりだったのにあらゆる層から注文が殺到し、在庫が常に切れている状態が続いた。
この品切れ状態がブームを加熱し、謝罪ガメ「ナカミヤくん」を知らない国民は1人もいなくなった。
TVアニメ化もされ、グッズが海外でも販売された。
「日本のショーニンの美徳を体現したアート」として紹介され、現代美術館にも展示されるようになった。

会社は大きく発展し、社員も増えた。
それでもナカミヤの給料は、本人に支給されることはなかった。
ナカミヤは一営業マンとして、淡々と、流通ルートを開拓し続ける日々を送っていた。

そんなある日、ナカミヤは社長室に呼ばれた。
解放だ、彼は本能的に思った。
久しぶりに近くで見る社長はずいぶん年老いて見えた。
厳しい面影がなりをひそめ、増えた白髪が表情を柔和に見せていた。

社長はナカミヤを見ると小さくうなずきながら言った。
「ナカミヤ君、ご苦労だったね。よく我慢した。」
そしてわずかに微笑んだ。
「そんな君にねぎらいの気持ちをこめてだね」
解放だ、ナカミヤは確信して、次の言葉を待った。
社長は言った。
「君、社長をやってみんか?」
そして微笑みはニヤニヤ笑いへと変わった。
「もちろん、給料はゼロだがね。」

それからも会社は成長を続け、日本におけるキャラクターコンテンツの最大手となった。
給料ゼロの社長の下で。



【この話に似合う曲は・・・】

ラスト・ダンスは私と(紙ジャケット仕様)
ラスト・ダンスは私と(紙ジャケット仕様)



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